余命宣告された患者が口々に語る「人生の後悔」をご存知ですか?
介護ヘルパーとして、余命幾ばくもない患者を間近に看取ってきたブロニー・ウェアさん。
そんな彼女が自伝とともに著した『死ぬ瞬間の5つの後悔』を読了しましたので、
一部ストーリーを要約、引用しながらご紹介します。
人生一度きり。悔いのない人生を送りたいものです。
【後悔1】自分に正直な人生を生きればよかった
ヘビースモーカーで暴君の夫を持ったグレースは、とてもつらい結婚生活を長きにわたり続けてきた。
そんなある日、夫も高齢になり老人施設に送られることになった。ようやく解放されたと思ったグレースは、80代になっていたがぴんぴんしていたので、旅行でもして残りわずかな人生を謳歌しようとしていた。しかし、そんな矢先、グレースは不治の病にかかっていることを告げられる。
原因は、夫のタバコの煙だった。
グレースは横暴な夫の指図を受け入れて、自分の人生を生きれなかったことに激しく後悔した。自由になって自立する日を待ちわびていたのに、それがかなった頃にはすでに遅かったのだ。
グレースは、著者のブロニーにこう言った。
「死を迎えようとしている私に約束して頂戴。どんな時も自分に正直でいること、他人に何を言われても自分の望み通りに生きることを」 引用:死ぬ瞬間の5つの後悔
期待に応える人生
自分の人生を生きようと誰もが思っているけど、なかなか人はそれを実行することができない。
グレースもその一人だった。
彼女が自分を悔やんだ理由は、自分の人生を生きる「勇気」が持てなかったことだった。
「結婚したら、何が何でも一生を添い遂げなければいけない」という呪縛から抜け出すことができなかった。
結婚制度に限ったことではないが、常識や世間体に縛られ自分が望む人生を生きられなかった、という後悔が1番多いようだ。
著者のブロニーはこのように言っている。
「自分に正直な人生を送らなかったことというのが、ベッドのわきに座って聞いた一番多い後悔であり、教訓だ。」 引用:死ぬ瞬間の5つの後悔
たった一度きりの人生。
他人の期待に応えるために自分の人生を生きれないのは何とも悲しいことだ。
【後悔2】働きすぎなければよかった
ジョンはバリバリの経営者だった。富と地位を手に入れ仕事をすることが楽しくてしょうがなかった。しかしその分、妻・マーガレットとの時間をないがしろにしていた。仕事が楽しいのと、地位を守りたい気持ちが強かったのだ。
マーガレットはジョンと旅行に行きたがっていた。ジョンに少しでも仕事を休んでともに過ごす時間を作ってほしかった。しかし、ジョンは「今大事な仕事を動かしている最中だから」といった理由で数十年もマーガレットを待たせた。
ーー
老齢になりマーガレットから仕事の引退を迫られたジョンは「わかった。でも、あと1年だけ待ってくれ」と最後の大きな仕事に夢中になっていた。
そして、仕事の引退まであと半月に迫ったとき、マーガレットはようやくジョンと家族旅行ができることに心を躍らせていた。ジョンもその日を心待ちにしていた。
しかし、その時マーガレットはすでに不治の病に侵されていることが判明する。そして、マーガレットは夢であった家族旅行に行くことも叶わずこの世を去った。ジョンの仕事の引退予定日3カ月前の事だった。
ジョンは妻より仕事を優先させ過ぎたことを激しく悔やんだ。
ジョンが仕事を続けていた理由は、楽しかったから以上に「その地位を失くすことが怖かった」というものだった。
私は怖かったのだと思うよ。そう、怖かったんだ。怯えていた。ある意味、地位が私の価値を決めていた。 引用:死ぬ瞬間の5つの後悔
そしてこのようにも言っている。
私は人生で本当に自分を支えてくれたものに十分な時間を費やさなかった。マーガレットと家族、そう、大切なマーガレットに。妻はいつも愛し、支えてくれた。それなのに私は彼女のために家にいようとはしなかった。妻は面白い人でもあったんだよ。一緒に旅をしたら、きっととても楽しかったはずだ。 引用:死ぬ瞬間の5つの後悔
バランス
人生にはバランスが必要だ。働くことは大切なことだが、それが全てではない。
自分の人生を生きる時間、大切な人と過ごす時間、社会のために働く時間。
全てが重要であり、大切なものだ。そのバランスを狂わせるのは恐怖や不安だ。
ジョンは「地位を失う恐怖や不安」からバランスを崩し、かけがえのない大切な時間を失くしてしまったことに後悔したのだ。
【後悔3】思い切って自分の気持ちを伝えればよかった
ジョセフは若い頃、ホロコーストを生き延びオーストラリアに渡ってきた。彼は辛い過去を考えずに済むように、仕事に精を出すことで、自分を、家族を守ろうとしていた。
ジョセフは自分の人生を語らなかった。強制収容所に入れられていた苦しい経験などを家族や子供たちに語りたくなかったのだ。その代わりに金の稼ぎ方や金の価値を教えた。
そのおかげか家族が金銭に困ることはなかったが、97歳になったジョセフを見舞いに来る息子は「ジョセフの金にしか興味がない」人になっていた。
それでもブロニーは、「家族に不自由な暮らしをさせなかった」とジョセフの功績をたたえた。
しかし、余命数週間となったジョセフはこんな後悔をした。
彼の頬を涙が一粒、流れ落ちた。「けれど家族は私がどんな人間かを知らない。知らないんだ。」私は彼を優しく見つめた。「知ってほしいのに」そういうと、涙が溢れだした。彼が泣いている間、私は黙っていた。 引用:死ぬ瞬間の5つの後悔
人への優しさが後悔につながることもある
ジョセフは、最後まで自分の苦しい人生を語らずにこの世を去った。
彼は本当の自分をさらけ出すことができなかった。
そして、ノウハウだけが伝わり「彼自身」を伝えることができなかったことに後悔したのだ。
それは彼の優しさであり、弱さだった。
自分が生きていた証を本当の意味で残すのは、ノウハウでも地位でも、業績でもなく、自分をさらけ出す自己表現なのかもしれない。
【後悔4】友人と連絡を取り続ければよかった
療養施設には孤独な人がたくさんいる。ドリスもそのうちの一人だった。
ドリスが育て上げた一人娘は、今は日本に住み、ほとんど会うこともなくなっていた。彼女はそれを「子供は親の所有物ではない」と受け入れていたが、死期が近づくにつれ孤独に苦しむようになっていた。
そんなドリスの後悔は、これまで長い間、友人と連絡を取っていなかったことだった。
ブロニーはそんなドリスの役に立ちたいと思い、ネットでドリスの旧友を探す提案をした。最初はドリスも「無理だ」と首を振ったが、それでもブロニーの熱意に押されて頼むことにした。ブロニーもこれまでの人生で同じような孤独の辛さを味わっていたからだ。
ドリスは特に親しかった4人の友人の名前を挙げた。しかし、そのうち1人は会話できないほどの病に臥し、2人はすでに亡くなっていた。ドリスはため息をつきながら半ばあきらめていた。そして、いつまでも最後の一人を探すことをやめないブロニーにつっけんどんな態度をとったりもした。
それでもブロニーは諦めずにドリスの最後の旧友を探した。そして、とうとうドリスの旧友であるロレーヌの連絡先を突き止めた。幸いにして健在だった。それを聞いたドリスはみるみる顔に精気を宿した。
受話器を握ったドリスは、友人の声を聴き、パッと顔を輝かせた。ドリスの声は年老いているし、ロレーヌの声も老いていたが、電話の両側で二人とも若い娘に戻っていた。 引用:死ぬ瞬間の5つの後悔
ドリスはその数日後、笑顔とともに息を引き取った。
ブロニーはその時のことをこのように語っている。
驚くほど短い時間で人生が変わることもある。ドリスは、私に初めて会った時の孤独な女性から、最後の日、嬉しそうに抱きしめてくれた人へと変わった。それはわたしにとってどんな大金にも代えられない喜びだった。 引用:死ぬ瞬間の5つの後悔
【後悔5】幸せをあきらめなければよかった
ローズマリーは、威圧的で傲慢な人だった。当時としては珍しく、女性で企業のエグゼクティブの地位についていたのだ。
そんな彼女の性格を決めたのは、若い頃の壮絶な経験だった。
名家出身で、もともとは従順な性格だった。しかし、若い頃に結婚し、DV被害に苦しめられる生活を送るようになった。離婚を決意するようになったが、当時は離婚がスキャンダルだと考えられていた風潮もあり、家系の評判を落とさぬよう町を離れ1人でやり直す決意を固めた。
ローズマリーは自分を認め、家族に認められるためにも、男性優位の社会で成り上がった。
老齢を迎えた今でもローズマリーの性格は威圧的なままだった。ブロニーにも威圧的な態度で介護を命令した。しかし、何度もブロニーが歩み寄ることで徐々に二人の壁が溶けていった。
そんなある日、ローズマリーがブロニーに突然語りかけた、
私、もっと幸せに過ごせばよかった。なんて惨めな人生だったのかしら。幸せになる資格なんて、私にはないと思っていたのよ。けれどそんなことはない。それがわかったの。今朝、あなたと一緒に笑っていたら、幸せを感じても罪悪感を持つ必要はなんてなかったんだってわかったの。 引用:死ぬ瞬間の5つの後悔
ローズマリーは未だに名家である家系に泥を塗ってしまったことを気に病んでいたのだ。そして、そんな自分は幸せになる資格などないと思い込んでいたのだ。彼女は変わらず従順な女の子だったのだ。被害にあっていたのは自分であり、苦しい思いを1番しているのは自分なのにも関わらず。
しかし、ローズマリーはこうも続けている。
本当に、自分で選んでそうしているのね。自分にはその資格がないと思い込んだり、他人の意見に引きずられて幸せにならずにいるのなら、それをやめればいいのよ。ああ、どうしてもっと早くに気づかなかったのかしら?なんて無駄なことをしたんでしょう! 引用:死ぬ瞬間の5つの後悔
この思いを吐き出してから亡くなるまでの数カ月間、ローズマリーは幸せを感じ、笑顔の絶えない日々を送っていたとブロニーは語る。
最後の最後にローズマリーは幸せを見つけ出すことができたのだ。
死ぬ瞬間の5つの後悔が教えてくれること
死ぬ瞬間の後悔に共通してみられることはこのようなことだ。
- 他人の批判や世間体に縛られ、自分に正直に生きられなかった
- 仕事に時間を使いすぎて、身近な人と過ごす時間を大切にできなかった
- 地位や名誉、財産に気を取られ、愛情や人間関係を疎かにしてしまった
死は誰にでも訪れるものだが、多くの人はそれを自分事として捉えることが難しい。
だからこそ、先人の後悔から学ぶ必要がある。
そして、それを生かすことができれば、先人たちの後悔も少しは報われるのではないだろうか。